症状の区分

統合失調症の症状の区分

<陽性症状>
幻覚・妄想・滅裂思考などをさす。
健常者にはこのような症状はなく、統合失調症になると出現する症状といった意味。
急性期に多く、抗精神病薬(統合失調症の治療薬)が比較的効きやすい面がある。
しかし、慢性期にも陽性症状を残している人もいる。

<陰性症状>
感情の鈍麻(平板化)、思考の貧困、意欲・発動性の低下、快感の消失、社会的引きこもりといった症状。
慢性期に目立つようになり、抗精神病薬はあまり有効ではない。

<抑うつ・不安>
統合失調症の患者は病気の経過中、不安を生じたり、抑うつ的になることもよくある。
例えば急性期の精神病状態が軽快した後、まるでエネルギーが枯渇したように元気がなくなることが多く見られる。
そのことを精神病後抑うつと言う。
そのような時は、うつ病と同じく自殺には注意しなければならない。
またその場合には、抗精神病薬に加えて抗うつ薬を併用するとよいことがある。

<認知機能障害>
従来は、統合失調症はいわゆる内因性精神障害であって、意欲・感情の障害のために人格変化をきたすことはあっても、知的能力の粗大な障害はきたさないと考えられてきた。
しかし、近年、統合失調症においても神経心理学的検査(大脳の器質的障害によって生じる失語のような心理的症状を研究する学問)によって検出されるような明確な認知機能障害が存在することが明らかになってきた。
統合失調症における認知機能障害とは、@注意障害、A実行機能(遂行機能)の障害、B記憶障害です。
実行機能とは、目的をもった一連の活動を有効に行うのに必要な機能であり、前頭前野(前頭葉の前の部分)で営まれるとされている。
また統合失調症の記憶障害の特徴は、短期記憶と手続き記憶は保たれるが、宣言的記憶(エピソード記憶と意味記憶)に障害がある点であるとされている。
病型
<妄想型>
好発年齢が一般的な統合失調症の発症年齢である20歳前後よりもやや遅く、20歳代後半から30歳代に発症することが多く、またその名のとおり、妄想・幻覚が主症状です。
比較的恒常的な妄想をもち、妄想体系(例えば、最初はとなりの席の人に悪口を言われているといった程度から始まるものの、やがて進行すると会社全体がグルになって自分を陥れようとしていると確信するに至る)まで生じることがある。
一方、意欲・感情の障害、行動の乱れなどは比較的少ない。
したがって陽性症状が主なので、比較的薬物療法が有効であり、、その点では予後はよい人が多い。
なお45歳以降に幻覚妄想状態が初発する人があり、統合失調症と比較して人格変化が少ないという特徴があるのだが、これを晩発性統合失調症とする立場と、退行期パラフラレニーという病名を付けて統合失調症とは別にあつかう立場とがある。

<破瓜型(はかがた) 解体型>
破瓜期とは思春期ないし青年期のこと。
その名の示すとおり、思春期に徐々に発病するタイプをいう。
その特徴として感情鈍麻・平板化、自発性減退などの陰性症状が中心であり、その一方で、幻覚妄想は存在することはあっても顕著ではなく、断片的・浮動的であることが多いとされている。
解体した会話や行動が特徴的であるので解体型ともいう。
陰性症状が主なので、薬物療法には反応しにくく、慢性的に経過し、徐々に進行することが多く、やがて無為・自閉に至り、予後は不良なことが多いとされる。

<緊張型>
急性発症のことが多く、精神運動興奮または緊張病性昏迷が中心症状となる。
昏迷とは意欲が落ちて寝たきりとなり刺激しても反応しなくなるので意識障害のようにみえるが、意識障害はなく患者はまわりで何が起こっているか把握しているような状態。
完全な昏迷の時もあるが、そこまでいかずにやや反応が鈍っている亜昏迷と呼ばれる状態のほうが多く生じる。
昏迷状態の人を意識障害と誤り、本人にはわからないだろうと本人の傍らでこころないことを言ったりすると、すべて理解されてしまい本人をひどく傷つけることがあるので注意しなければならない。
その他に緊張病症候群という症状がみられることがある。
緊張型は10歳代後半から20歳代前半に好発し、治療にはよく反応し比較的急速に収まるのだが、再発も多い。

緊張病症候群
@カタレプシー(強硬症)
他動的にとらせた姿勢をいつまでも保つ
A反響症状
相手の動作・言語のまねをする。反響動作、反響言語という
B常同症
同じ動作、同じ姿勢、同じ言葉をいつまでも繰り返す
C衒奇
奇妙なわざとらしい動作・表情
D拒絶症
他人からある行為をすすめられても拒否すること。拒食・拒薬・無言症(話しかけられても言葉を発しない)を生じる。


<単純型>
破瓜型よりもさらに陰性症状が中心で幻覚・妄想を欠くもの。
このタイプは性格的片寄りとの区別がつきにくく診断に苦労することがある。

<鑑別不能型>
明確に分類できないタイプ。

<精神病後抑うつ>
急性期の統合失調症症状が抑うつ状態におちいってる状態をさす。

<残遺型統合失調症>
統合失調症急性期の陽性症状の消失後、慢性期に主に陰性症状が持続する状態であり、欠陥状態ということもある。

<小児統合失調症>
少数だが、思春期以前の8歳ぐらいから発病する統合失調症もある。
引きこもり、奇異な行動が目立ち、予後はよくない。
大人の統合失調症よりも症状として幻視が多いとされる。

<接枝統合失調症(接枝分裂病)>
精神遅滞者が統合失調症を生じた場合、精神遅滞という元の木に統合失調症という別の木が接ぎ木されたようであることから、このような病名がついた。


参考文献

DSM-W
米国精神医学会
 訳:高橋三郎 大野裕 柴矢俊幸 

精神医学ハンドブック 医学・保健・福祉の基礎知識
 2007 日本評論社 山下格
 
メイクマニュアル医学百科 最新家庭版
 2004 日経 BP社 福島雅典

スティグマの社会学
 2001 セリカ書房
     アーヴィング・ゴッフマン
     石黒 毅

こころの健康事典
 1999 朝日出版社
     町沢 静夫

新精神医学
 2005 日本医事新報社
     稲見 充昭 監修

こころの治療薬ハンドブック
 2006 星和書店出版
     青葉 安里
     諸川 由美代

こころの医学事典
 2003 講談社出版
     野村 総一郎
     樋口 輝彦  監修

からだの地図帳
 1989 講談社出版

病気の地図帳
 2000 講談社出版
     山口 和克  監修

精神科ポケット辞典
 2006 弘文堂出版

精神保健福祉用語辞典
 2004 中央法規出版

臨床心理学辞典
 1999 八千代出版

精神科看護用語辞典
 2000 メヂカルフレンド出版

心理臨床大辞典
 2004 培風館